研究テーマ詳細

(1)特殊な環境(高圧、極低温、高電場、高磁場)を組み合わせた時に現れる物質特性の解明
普段何気なく使っている物質でも高圧力、極低温、高電場、高磁場などの特殊な環境下では我々が予想もしない性質を示すことがあります。本テーマでは、これら特殊環境を複数組み合わせ、擬1次元導体の新しい性質の探索・研究を行います。


(2)相転移温度近傍での電気的/熱的特性に関する研究
擬1次元導体は低温で電荷密度波(CDW)、スピン密度波(SDW)超伝導(SC)などの多彩な相に転移します。これら凝縮相の特性や相転移の特徴を電気的/熱的測定から明らかにします。また物性測定と並行して、比熱測定装置開発も行っています。


(3)単結晶試料の育成
擬1次元無機導体ブルーブロンズ(A0.3MoO3[A=K、Rb])、擬1次元有機導体(TMTCF)2X[X=AsF6、SbF6]、転移温度Tc=30K級の超伝導体などの単結晶試料を電気化学的方法によって育成し、育成条件の違いによる結晶状態や特性の変化を調べます。育成した試料は他のテーマに活用されます。


(4)凝縮相における電子状態密度の解明
電荷密度波(CDW)、スピン密度波(SDW)、超伝導(SC)などの凝縮相ではフェルミレベルにエネルギーギャップが生じます。このギャップの特性を明らかにするために、点接触法による電子状態密度の測定を行い、凝縮相の特徴を解明します。また、将来圧力下において電子状態密度の測定を行うための方法を開発しています。


(5)物質の境界面に発生する摩擦に関する研究
2つの物体を接触させたときに発生する摩擦の研究は古くから行われていますが、未だに解明されていない課題が多く残されています。現在は主に金属と木の間に生じる摩擦現象を対象にしています。


(6)層状物質の電気的特性制御
擬1次元無機導体ブルーブロンズの研究から派生したテーマです。ブルーブロンズなど層状物質の電気的特性を制御する方法を試行しています。


(7)薄膜微細加工による超伝導ディバイス作製の試み
3次元ピエゾステージを使って超伝導薄膜の微細加工を行い、超伝導素子(ジョセフソン接合など)の形成を試みます。


(8)新奇超伝導体の探索 (本年度はお休み)
無機酸化物を中心に、いろいろな物質を作成・育成して超伝導性を示すかどうか確認します。


(9)物質表面における電界効果
(本年度はお休み)
壁開性のよい結晶(結晶面を得やすい物質)の表面を加工し、加工面に電場をかけることで新しい現象を発生させられないか試みます。


(10)密度波の並進運動(本年度はお休み)
電荷/スピン密度波(CDW/SDW)に適当な値以上の電場を加えると、ピン止めが外れて並進運動が起こります。この並進運動によってオームの法則から外れた非線形電気伝導や電圧振動が観察されます。これは凝縮電子系での摩擦現象に対応します。



【用語】
擬1次元導体:
一般的な金属中の電子の運動のしやすさは3次元の各方向で違いはほとんどない(等方的)が、擬1次元導体中の電子は特定の1方向以外への運動が非常に制約を受ける(異方的)。このような特性のため、擬1次元導体では等方的な物質には現れないような現象が観測される。擬1次元導体と擬2次元導体は、あわせて低次元導体とよばれる。

ブルーブロンズ:
組成式A0.3MoO3[A=K、Rb]で書き表される擬1次元導体で、名前の通りに濃青色をした結晶。僻開性が高いことも特徴の1つ。

電荷/スピン密度波(CDW/SDW):
電荷やスピンの密度に空間変調が生じている状態。フェルミ面のネスティングが生じやすい低次元導体でしばしば観察される。

(TMTCF)2X:
擬一次元的な電子系を持つ有機導体。C=S, SeおよびX=AsF6、SbF6など。有機導体で初めて超伝導性を示したことでも有名。
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