原子や分子はプラスに帯電している「核」の部分とマイナスに帯電している「電子」から構成されます。このプラスとマイナスの電荷の大きさは同じなので,原子や分子は全体として電気的に中性です。固体結晶ではたくさんの原子や分子が規則正しく配列しているため,核は自由に結晶中を動き回ることが出来ません。このような状態の核は「格子」や「格子点」などと呼ばれます。

一方、電子は格子点の周りの存在確率が高いところを比較的自由に動くことが出来ます。図の「電子雲」とは電子がいる確率の高い場所を模式的に表したものです。これら電子雲が重なっていれば、電子は自由に隣の電子雲へ移動可能となります。電気を通しやすい物質の場合は、隣同士の格子の周りの電子雲の重なりが大きいと考えることが出来ます。一般的な3次元金属ではこの重なり具合はどの方向でも均等(等方的)な場合がほとんどなので、電子の動き易さはどの方向でもほとんど同じです。

ところが擬1次元導体では特定の1方向への重なりが大きいものの他の2方向の重なりが小さいという異方的な性質を持つため、電子には動き易い方向と動きにくい方向が出てきます。このような特殊な事情を持つ擬1次元導体では、一般的な3次元導体ではあまり観測されない新奇な電子状態(電荷密度波:CDW,スピン密度波:SDW,異方的超伝導など)が数多く観測されます。
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